番外・ニューラルネットワークによるモノクロ写真自動色付けの講座に参加―学んだのは写真を仲立ちにしたコミュニケーション

信州戦争資料センター

2018年05月27日 00:55

 ニューラルネットワークによるモノクロ写真の自動色付けとその加工や活用を学ぶワークショップ「人工知能(AI)を使った『記憶の解凍』」に参加してまいりました。横浜市にある日本新聞博物館で、渡邉英徳・東京大学大学院情報学環教授のご指導を約2時間にわたってうけて参りました。

 ワークショップは、渡邉教授の説明で開講。AIによる色付けは完全ではなく、それを広島や沖縄の人と話を重ねることで、人が知識を加えてモノクロをより記憶に近いカラーにするのが現在の取り組みであると。そして、そのことをきっかけに、消えてしまいかかっている記憶が現代につながる「記憶の解凍」に意味があるとされました。完全な再現を追いかけるのとは違い、コミュニケーションのきっかけにするのが色付けの本旨であるとのことでした。

 受講者は30人。6人ずつ5班に分かれての作業です。指示に従ってスキャン用アプリをダウンロード、自動色付けのサイトを登録して、持参のモノクロ写真を取り込んでは自動色付けしていきます。アプリによるスキャンがとても楽で、驚きでした。そして色付け、はスムーズ。これを参加者がそれぞれ見て、感想を話し合いました。渡邉教授の指導を受けておられる大学院生のサポートも良かったです。

 小さいころの写真、海水浴の写真、アインシュタインの写真、そしてわたしが持参した戦時下の学生の写真などなど。見ながら話していると、いろいろ発展するのが面白い。色の再現のために現地であらためて撮影し加工するのも良いねーなどと、盛り上がりました。

 ここまでは、だれでも簡単にできます。そこで、渡邉教授がやっている画像の加工方法を教わりました。実は、自動色付けでは、加工するために用意した写真より解像度をぐんと落として色付けするというのです。これは、あいまいさを導入することにより、色付けが自然な感じになるという理屈からだとのこと。そこで、色付けしたものは色素材と考え、元の写真の上にこの色付け写真を載せて色だけ移すという行程を行うと、輪郭がすっきりとした元の写真の仕上がりに。さらに、あきらかにずれがある灰色の肌などは、同じ写真にある別の人の肌色を載せてやるなどすると、写真の雰囲気を壊さずに加工が進みました。ほかに、色温度の設定など、重ねた技術の一端を教わりました。

 渡邉教授は「目の前で色が付く、その瞬間に感動し記憶がよみがえる。どんなにAIが発達しても、感動したり思いを刻んだりするのは人の仕事で、これはずっと変わらない」とお話しくださいました。実際、ワークショップの初めて顔を合わせた方々と、さまざまな語り合いができ、渡邉教授いうところの「小さなコミュニティー」ができたのが一番楽しかったと思います。

 ワークショップ終了後、渡邉教授は新聞博物館で開催中の沖縄写真展会場で、ご自身が加工された写真を前に、説明をしてくださいました。

 自動色付けをした後、写っているものが何かを最後まで追い詰めたこと、空の色が沖縄のぎらりとした感じとは違ったので、実際に沖縄で写真を撮影して反映させたことー。それも、話が膨らむようにとの思いであると。実際、自動色付けは色を再現できるわけではありません。でも、疑似的な色がつくことで、写真の主人公たちが生き生きとして、それが人々の会話や地域の理解につながるのだなと感じました。色づくりを追及しすぎないで、人のつながりを大事にすること。そんな真髄を教われたのが一番の収穫でした。

 わたしも少しずつ、現在アップしている自動色付け写真を加工していきたいと思っています。そしてぜひ展示の機会をつくり、来場者と会話をはずませたいと思っています。

 現在はお手軽な自動色付けのみのものですが、よろしければこちらの一覧からご覧ください。

2018年5月27日 記

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