19日までの「戦時下の信州教育展」は長野県内各地の中等学校や高等女学校、計11校の写真を展示しています

 長野市のギャラリー82で19日まで開催中の第4回展示会「戦時下の信州教育展」のメーン展示、戦時下の学校の写真。ニューラルネットワークによる自動色付けと補正作業によってカラー化させた14枚を中心に、32点の写真を展示しています。大部分は初の一般公開で、カラー化の試みも長野県関連写真で初めてです。写真は伊那高等女学校の耐寒武道鍛練です。
19日までの「戦時下の信州教育展」は長野県内各地の中等学校や高等女学校、計11校の写真を展示しています

 選んだ学校も多岐に渡ります。長野県は広く山脈が区切っていることから、長野市を中心とした北信、上田佐久地方を中心とした東信、松本市を中心とした中信、諏訪・伊那・飯田をまとめた南信と、大きく4地区に区分されます。今回は名前のわかっている学校10校の地域別でみると、以下のようにうまく散らばっています。

 北信―長野商業学校(現・長野商業高校)、長野工業学校(現・長野工業高校)、長野高等女学校(現・長野西高校)
 東信―小県蚕業学校(現・上田東高校)、蓼科農学校(現・蓼科高校)
 中信―南安曇農学校(現・南安曇農業高校)、東筑摩農学校(現・塩尻志学館高校)、木曽中学(現・木曽青峰高校)
 南信―伊那中学(現・伊那北高校)、伊那高等女学校(現・伊那弥生ケ丘高校)

 また、展示品もさまざまな学校の関連品があります。
 ・須坂高等女学校(現・須坂東高校)生徒が使った防空頭巾
 ・飯山中学(現・飯山高校)の勤労報国隊腕章
 ・諏訪中学(現・諏訪清陵高校)で使った銃剣術の木銃
 ・岡谷工業学校(現・岡谷工業高校)校長の大きな書名が入った寄せ書き
 ・伊那中学生が勤労動員に合わせて教科書を封印した気持ちを書いた教科書
 ・伊那中学生の戦時教育令を喜ぶはがき
 ・伊那中学報国団で買った陸軍幼年学校の入試問題集

 そして国民学校関連で、現・茅野市の永明尋常高等小学校の昭和11年修学旅行ガイドと、下諏訪町東国民学校の昭和17年就学旅行の感想文、学校不明の海軍兵学校進学の決意を表明する国民学校5年生のはがきを置いてあります。

 展示品は、ぎりぎりまで集めました。東筑摩農学校の卒業記念アルバムを入手したのは7月に入ってから。最初は年代がわからず困っていたのですが、ある写真の日めくりカレンダーで「2598年 2月11日」を確認し、昭和12年度のものと判明しました。ちなみに、年代別でいきますと、以下のようになります。

 昭和 7年度―木曽中学
 昭和 8年度―長野商業学校
 昭和10年ころ―校名不詳女学校
 昭和11年度―長野工業学校
 昭和12年度―東筑摩農学校
 昭和13年度―長野高等女学校、伊那中学、伊那高等女学校
 昭和16年ころ―蓼科農学校
 昭和17年度―小県蚕業学校、南安曇農学校

 満州事変当時から日中戦争、太平洋戦争と、年代を順に追っていくことが可能になっています。地域、時期ともうまく散らばり、変化を見て取れると思います。ちなみに、小県蚕業学校に在籍していた方から伺ったところ、昭和17年のアルバムがたぶん最後で、それからは作る余裕がなかったとおっしゃっておられました。ただ、昭和17年度までは、教練の強化や勤労奉仕の導入など、どんどん忙しくはなりましたが、まだ学生が学生として生活できた時代でした。昭和18年度以降は急激に学校の軍隊化が進み、昭和20年4月には完全に学業停止、学生も奉仕から動員になっていったのです。

 そんな貴重な昭和17年度の小県蚕業学校のアルバムは、生徒のアルバム委員による撮影。おかげで鬱される側も自然な雰囲気で、戦時下でもまだ活き活きした学生の姿を追いかけられる、貴重な写真となりました。
19日までの「戦時下の信州教育展」は長野県内各地の中等学校や高等女学校、計11校の写真を展示しています

 写真は、体力章検定の幅跳び。地面に這うようにして撮影しています。

 最後に、こちらの写真はぎりぎりで入手し、展示に間に合わせた東筑摩農学校の生徒たちです。撮影日時は昭和13年2月11日。
19日までの「戦時下の信州教育展」は長野県内各地の中等学校や高等女学校、計11校の写真を展示しています

 会場でよく見ていただきたのが、黒板の寄せ書き。「彼女元気で」といった若者のしゃれっけのある書き込みに重なるように「堅忍持久 挙国一致」といった軍国のスローガンも並んでいます。この生徒たちは、おそらくこの軍国の掛け声に押されて、それぞれの持ち場に散っていったのでしょう。くったくない笑顔のまま、元気で生き抜いていてくれと思わずにはいられません。

2018年8月14日 記

※このブログのコンテンツを整理したポータルサイト信州戦争資料センターもご利用ください。

※WEB上でモノクロ写真をカラー写真のように加工できる、ニューラルネットワークによる自動色付けを試しています。早稲田大学の飯塚里志さま、 シモセラ・エドガーさま、石川博さま、関係各位に熱く御礼いたします。公開方法については、東京大学教授の渡邉英徳さまにご示唆をいただきました。ありがとうございました。

※他の自動色付け写真はこちらの一覧からごらんください。


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2018年08月14日 Posted by信州戦争資料センター at 22:57 │イベント報告