戦前に存在した「徴兵保険」の明るいポスター

 徴兵制度があった戦前には、徴兵保険という保険がありました。男児が対象で、20歳の満期時に徴兵されれば保険金が下りるという保険。徴兵が免除されていた場合にも、満期金が下りるという仕組みでした。こちらは、富国徴兵保険相互会社の徴兵保険PRポスター。基金の額から、創業まもない大正12年―13年ごろの販促ポスターとみられます。
戦前に存在した「徴兵保険」の明るいポスター

 20歳という年齢は、既に職場では仕事も覚えて十分戦力として期待される世代。特に大多数を占めた農家では、大変貴重な働き手です。これが2年間の兵役に出るとなると、家計の痛手は免れません。家族経営の商店など大変なこととなり、個人経営の職人だったりすると、顧客をライバルに奪われて大きな影響を受けるということもあったようです。また、出征時にかかるさまざまな出費に備えるという狙いもありました。それだけに、もしも、の徴兵に備えるのは庶民にとって大切なことでした。

 当時の徴兵保険会社は株式会社ばかりでしたが、富国は相互会社として売り込み、瞬く間に契約を増やしていきます。
戦前に存在した「徴兵保険」の明るいポスター


「安心して兵役につくことが出来ます」
のキャッチコピーが、世の親御さんを動かしたのでしょうか。

戦前に存在した「徴兵保険」の明るいポスター

 ただし、お子様方が「ぼくらの貯金だー」と喜んだか、は定かではありません。

 戦争が終わって、徴兵保険会社はいずれも生命保険会社に衣替えし、現在ももしもの備えの商品を考え出してくれています。徴兵保険の復活を必要とする時代が、二度と来なければよいと思っています。

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2016年03月18日 Posted by信州戦争資料センター at 22:14 │収蔵品