昭和18年の長野県はコメの無駄排除で里帰りや葬儀の伝統も見直しや廃止―戦争はなりふり構わない

 昭和18年9月、秋の刈り入れ時期の長野県水内村(現・栄村)では、大日本婦人会村支部の指令で「秋餅半減運動」に取り組んでいました。こちらは、各班への回覧です。
昭和18年の長野県はコメの無駄排除で里帰りや葬儀の伝統も見直しや廃止―戦争はなりふり構わない

 「秋餅」とは、秋の収穫が終わった後に、嫁が実家へ戻る風習で、その際、実家では餅を用意して迎えたのです。この回覧では、「戦時下食生活の改善が実行されておりますが、まだまだ研究の余地が相当ある」と指摘。そして近々迎える秋餅について「例年の量より本年は半分に」と周知しています。
昭和18年の長野県はコメの無駄排除で里帰りや葬儀の伝統も見直しや廃止―戦争はなりふり構わない

 せっかく骨休めになる里帰り、そんなことにまで目を光らせます。

 一方、同じ昭和18年3月、上伊那郡美和村(現・伊那市)の非持、非持山両地区では「葬儀の枕飯」と称する風習が常会で問題になりました。これは、遺骸を埋めた後、大きな茶碗に白いご飯をしっかり山盛りにして供える風習で、できる限り大盛りにするのが亡くなった人への礼であるとされていました。

 既に玄米食や節米が叫ばれている中、鳥の餌食にするのはいかに長い伝統とはいえ廃止せよ、と一決しました。そして墓参りのお供えにも、コメや団子のお供えは全廃し、水と花のみとしました。(以上、昭和18年3月7日付信濃毎日新聞より)

 さらに、死後の法事を取りやめる動きも。昭和18年3月12日付信濃毎日新聞記事を転載します。(句読点を適宜入れ、漢字を直した)

 「更級郡西寺尾村では大東亜戦を勝ち抜くにはまず農村生活の不急不要の行事の廃絶や繰り延べによって物資の節約、時間の空費防止を図らねばならぬという建前から、今度常会の決議事項として法事の延期を採択した。法事は父祖の追悼祭祀として絶対廃止はできないが然しこれによって物資の冗費はもちろんのこと、親戚縁者が集まれば増産時代それだけ労力も割愛されるので『勝つまでは法事をやめよう』ということになったもので、その代わり完勝の暁は報告祭を兼ねて盛大に催そうと期せずして決定したものである(略)」

 何もかもを戦争に、という掛け声は、国民の伝統や風習を薙ぎ払っていきました。特に国内のストックが枯渇してきた昭和18年からは、とんでもない現象が次々と生じていきます。戦争する国家のため、庶民のささやかな祈りや願いはかんたんに吹き飛ぶこと、よく見ておいてほしいと思います。

2018年5月16日 記
2018年5月18日 追記

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2018年05月16日 Posted by信州戦争資料センター at 23:24 │収蔵品