映画「元ゼロ戦パイロットの100年」上映会場で披露する戦時紙芝居の打ち合わせをしました―フクチャンとチョキン上演します

 信州戦争資料センターは、ドキュメンタリー映画「原田要 平和への祈り 元ゼロ戦パイロットの100年」(上映期間 2018年7月28日―8月17日、上映会場 長野相生座ロキシー 長野市権堂町2255・電話026・232・3016)の
上映期間中、戦争資料展示と戦時紙芝居の提供をします。本日、紙芝居の上演をしてくださる方たちと打ち合わせをしまして、演目を決定しました。
映画「元ゼロ戦パイロットの100年」上映会場で披露する戦時紙芝居の打ち合わせをしました―フクチャンとチョキン上演します

 漫画家として当時から戦後にかけて活躍した横山隆一のキャラクターを使った「フクチャンとチョキン」です。昭和15年11月、日本教育紙芝居協会発行です。

 ストーリーは、フクチャンがお国のために小遣いを頑張って貯金し、それを知ったおじいさんも協力して、たまったお金で国債を買うというもの。子供も楽しめるよう、ずっこけたりとぼけたりといった味わいも含めて、子供やお年寄りが頑張る姿を通して、貯蓄と国債の消化を訴えています。

 ところで、なぜ貯金や国債の消化が必要だったのでしょうか。日本は昭和12年に日中戦争が始まってから、中国の戦争にかかる臨時軍事費を国債を発行してまかないます。今でいう、赤字国債です。当時、日本は国際連盟を脱退するなど、孤立化を深めていた時代。日露戦争当時と違い、どこの国も投資家も、日本の国債を積極的に買ってくれません。これを国内で消化しないと予算が立たないということになります。

 もう一つ、軍需品を購入したり生産したりすると、それだけ市中に日本円が出回ります。これが消費に回りますと、普通なら経済が活性化するところですが、戦争に全力を傾けている国内はモノが不足しています。そこへお金だけは豊富となれば、需給バランスが崩れてインフレになります。そもそも、通常の予算に無理して戦争の予算を載せるわけですから、日本の経済力と貨幣の量のバランスはもう崩れているわけです。それが市中にまで広がるのを防ぐため、できる限り国債や貯金で消費を押さえなければ、と政府は考えたわけです。

 しかし、ここに重大な落とし穴があります。国債といい、貯蓄といい、いずれも利息が付いて回ります。つまり、将来は流通する円の量が確実に増え、インフレになるわけです。これを先送りにしただけにすぎません。これでは国内も回らない。そこで、搾取することで穴埋めしていかなければならなくなり、満州国からの収奪や南方への進出につながるわけです。

 日中戦争を取回す経済力がないのに、大東亜共栄圏の経営など、できるはずもなかったのです。結局、太平洋戦争が始まり各地を占領しても、初期投資の資金も技術もなく、占領下の各地では紙屑のような軍票がすられてインフレが進行し、日本統治への不信につながったのです。

 紙芝居を笑って見ながら、国民に消費節約を日中戦争中から訴えなければならなかった日本の経済のぜい弱さと、おかまいなしに進んだ戦争のことに思いをはせてもらえたらと思います。

 会場の映画館ロビーでは、戦争の雰囲気を盛り上げた当時の広告やポスター、映画に登場する資料などを展示します。紙芝居の上演は7月28、29、8月11日です。時間等は映画館か映画のホームページでご確認ください。監督挨拶も合わせて行う予定です。また、8月11日は信州戦争資料センターと八十二文化財団の共催による展示会をギャラリー82で行っていますので、紙芝居・映画鑑賞と展示会と、はしごをしていただけると大変ありがたいです。よろしくお願いします。

 ★ただし、8月11日は紙芝居の上演はありません

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2018年06月17日 Posted by信州戦争資料センター at 22:22 │収蔵品