昭和18年、女子体力章検定導入!男子の検定と同様の種目は「運搬」という意外性

 日中戦争下の昭和14年、健兵健民の育成を狙って男子を対象に始まった「体力章検定」。
昭和18年、女子体力章検定導入!男子の検定と同様の種目は「運搬」という意外性

(ニューラルネットワークによる自動色付け。小県蚕業学校=現・上田東高校=昭和17年度卒業アルバムより)

 太平洋戦争に突入した昭和18年からは、同様の狙いで女子を対象とした「女子体力章検定」が始まります。検定種目は①千メートル速行②縄跳び③短棒投げ④運搬50メートル⑤体操―の5種類。ほかに、特殊検定として水泳、強歩がありました。

 男子の検定種目は①100メートル走②2000メートル走③走り幅跳び④懸垂⑤手榴弾投げ⑥重量運搬―の5種類。
 なんと、共通しているのは投擲と運搬! 

 ここに掲げたのは、男子の重量運搬。男子の場合、40-60キロの俵を担いで50メートルを走るとなっていました。女子は同じく50メートルで、12-24キロの物を運ぶとなっています。調べてみると、女子の場合は両手から下げるか抱えて運ぶとなっており、例えば両手にバケツを持って、そこに規定の重さになるよう分散したモノを運んだようです。上級だと、24キロの物を下げ、18秒で走る必要がありました。

 男子は俵担ぎ、女子は両手にバケツ…露骨に男女の性別分業をしてあります。

 短棒投げは、重さ300グラム、長さ30センチの棒を投げることになっています。男子の手榴弾投げの540グラムよりはずっと軽くなりますが、99式手榴弾は330グラムの重さだったので、これに準拠したのではないかと思われます。

 当時の新聞に、女子体力章検定制定に関する記事があります。ここには「産み育てる責任と義務を持つ女子青少年を健全そのものにするために役立てることとなった」「世界人口戦の覇者となり得る母体を造りあげようというのである」と書いてあります。(昭和17年12月22日付信濃毎日新聞)

 子供を産むのも育てるのも極めて個人的なことなのに、とんでもない口出しです。

 この記事をおかしい、と思える感度が、実は今、必要なのではないかーと考えたりしています。

2018年1月24日 記

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2018年01月24日 Posted by信州戦争資料センター at 22:25 │時事コラム